「欧州の高齢者は年金支給開始を待たずに引退する傾向があり、逆に日本の高齢者は年金支給開始年齢になっても働き続ける傾向がある」――OECDが加盟各国の年金制度を展望した調査によってこんな結果が浮かび上がってきています。
今年2019年、日本の年金制度は5年に一度の財政検証の年に当たっていました。財政検証は、「公的年金財政の定期健診」のようなものとよく言われます。公的年金制度は、社会全体の状況を考慮して給付と負担のバランスを調整していますが、その仕組みがきちんと機能しているか、5年に一度点検しているわけです。
その指標に「所得代替率」があります。年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(賞与込み)と比較してどのくらいの割合か、を示すもので、この数字が年金制度のゆくえを左右すると言っても過言ではありません。
今年度の場合、現役男性の平均手取り収入額である約35.7万円に対して、モデル世帯とされる夫婦2人の基礎年金額と夫の厚生年金の合計約22万円の割合が、67.1%となっています。
将来は平均余命の伸びに伴って平均受給期間は延びるものの、所得代替率は低下していく見通しです。ただし、現行制度における所得代替率は、20~60歳まで40年間働くことを前提に計算しているため、40年を超えて働くことで公的年金の受給開始を繰り下げれば、その分給付水準が上がるので将来の所得代替率の低下を食い止められる、という試算もされています。
年金と仕事は切っても切れない関係です。冒頭のOECDの調査でも明らかないように、日本ではシニアになってからも働きたい、と考える人が多くなっていますが、かつて60歳が一般的だった定年退職年齢は、本人が希望すれば65歳まで継続して働くことが可能になり、制度改正も進んでいます。さらに、働ける年齢を70歳に引き上げることも視野に入れ、国は多様な年金と雇用の組み合わせを可能にする制度の柔軟化や改善の検討を始めています。発信情報に目を向け、自分たちの将来についてしっかり把握しておく必要があるといえるでしょう。